ありがとう

の枝を握ったり岩肌をつかんだりするたびに、いつしか心のなかで
 「ありがとう」とつぶやくようになっていたのだ。
   小枝よ、ありがとう
   岩よ、土よ、ありがとう
   大自然よ、ありがとう
          「屋久島ジュウソウ」(森絵都著/集英社)より



の文章を読んだとき、ゾクゾクするほど嬉しくなった。
私と同じだ・・・・って。

えば、私が歩きながら木に「ありがとう」って思うようになったのも屋久島を縦走したときからだった。 しとしと雨が降り、ガスが立ち込める深い森の中をぐんぐん進んだ。 高塚小屋までは苦手な下りの登山道。ヒザがケタケタ笑い出し、ちょっと下ってはよろめいた。そんなとき、雨をしっとり含んだフカフカの屋久杉たちに助けてもらった。

の時から、歩きながら木や岩にそっと手を添えるときは「ありがとう」。
倒木をヨイショと跨ぐときは「おじゃまします」ってつぶやくようになっていた。

んなガラじゃないんだけれど、それでもつい言ってしまう「ありがとう」
「おじゃまします」。 ずっとその気持ちを忘れずに山で遊ばせてもらいたい。