NA01143A.gif (987 バイト)  序章 〜旅立ち〜

    1日目   1997年 8月30日
     

    
1人で北海道を旅行しよう。そう思ったのは、大学4年の夏だった。
           北海道へは、サークルの合宿で何度も行っていたものの、一人で思う
           存分、北の大地の魅力を満喫しようと、大きなザックを背負って出かけ
           たのだった。

     朝、8時過ぎの新幹線に乗る。手には「北海道周遊券」。周りは出張の
          サラリーマンが多いので、大きなザックをかついだ私はちょっと異端児。
          ちょっと赤くなって、体をシートに深く埋めてしまう。

    社会人の今となっては、新幹線と特急を乗り継ぎ12時間をかけて札幌
         に行くなんて、時間がもったいないように 感じるが、当時、夜行列車
          「急行八甲田」を愛用していた私にとっては新幹線はとんでもない贅沢な
          乗り物で、その日のうちに北海道に到着できるなんて、大躍進であった。

  少しずつ混んでいく特急列車の窓からは、羊蹄山やら有珠山なんかが
          見え北海道に来たんだなあと徐々に実感していく。やがて、右手にサッ
          ポロビールの煙突や代々木ゼミナールの看板が見え、札幌についたと
          いう 車内アナウンスが流れる。  
    

 

NA01143A.gif (987 バイト)  兜沼に陽は落ちて

 1〜2日目     8月30日〜8月31日

   ホームに降り立つと、むっとくる空気が重い。案外、札幌も暑い。
      今回は、札幌はスルー。夜行「急行利尻」に乗り込み更に北を目指す。
      この列車は最後尾が旭川止まりなので注意しなくてはいけない。この日
     は、 たいして混雑していなく、半分以上の客が、旭川で降りてしまう。
      クーラ ーが効きすぎているので、上にあげたザックから長袖を出し熟睡。

  次に目が覚めた時は湿原の中だった。時折、牧場が見える。
      まだ4時頃だが、明るい

 5時06分。豊富駅に下車。私の乗っていた4号車はホームに架からない
       ということで、少し慌てた。下車後、空を見上げると雲が多いので、心配
       なり公衆電話で天気予報を聞くが、まずまずのよう。駅には他に大学生
        のグループがシュラフにくるまっている。

      
 駅前のレンタサイクルは9時から。朝食のカロリーメイトをかじってから、
       外をウロウロしてみると、草野球のグラウンドが見つかる。ゴロリと寝転
       び雲を見ながらボーッとする。地元の人から見ると、チョー怪しいだろう
       が、私にしてみると、最高の時間の過ごし方(^^)。 
                 

 9時になったので、ノソノソ、自転車を借りに行く。強風の中、サロベツ
     原生花園にペダルをこぎだす。ペダルは重いが風が気持ちよい。
     原生花園は、そこがそうだよ、と言われなければ気づかないくらいの
     ただの草っぱらだった。とはいえ、良く見ると、小さな花が、海からの風に
    吹かれながら、ひっそりと咲いていたのだった。

 この日の宿は、数年前から目をつけていた「兜沼キャンプ場」。
     風呂代込で500円はオトク。蚊が多く、あちこちのテントから蚊を追う
    「パチン」という音を繰り返しているのが聞こえた。
     夕方には、雲も晴れ、利尻山が、雄大なシルエットを浮かびあがらせ
     翌日からの礼文島での3日間に大きな期待を抱かせてくれた。


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