● 添乗日記7 
     
         きっと、先生は分かってる 
     

       20002月 某私立高校  修学旅行 (In 沖縄県) 

    今回の仕事は、私立高校の修学旅行。今日の宿は、ビーチを前に持った
      しゃれたホテルです。夕食まで、生徒さんは雨が小止みになったのを見計らっ
      てビーチで大はしゃぎ。といっても、もちろん沖縄とはいえ、2月は寒く、浜で
      追いかけっこをするくらいですが。

     食の5分前。生徒さんを呼びに浜に降りてみました。と、みんなちゃんと食事
      会場に向かったよう。誰もいません。いるのは、せっせと浜に落ちているゴミ
      を拾っている人が数人いるくらい。
「あれっ?」その数人をみてビックリ。
      私のバスに乗ってる子たちなのです。

     「添乗員さん、見てください〜〜」と両手に持ちきれないほどのゴミを私に
      見せてくれました。釣り糸、ペットボトル、ビニール袋、ビーチサンダル・・・。
      とにかく、すごい量のゴミです。奇麗なリゾート地の浜辺にも、こんなにゴミ
      が落ちてるものなのね、とビックリ。そして、それに気づいてみんなでゴミ拾い
      しようという発想の素晴らしさにまたまたビックリ。すっかり、感心してしまい
      ました。

     と、そうだ、ご飯の時間なのだ。「もう、夕食の時間だから、食事会場に行っ
      てね」と、促すと、「でも、これを片づけるまでは、僕たち行けません!」と言い
      張ってその場を動こうとしないのです。。とりあえず、フロントまでひとっ走り、
      大きなゴミ袋を取りに行きます。この時点で、食事開始時間5分経過。担任の
      先生の怒ってる顔が目に浮かびます・・・。

     「さぁ、持ってきたよ」と、ゴミ袋を差し出します。皆で手分けして大急ぎで
      ゴミを分別。生徒達も、奇麗になったビーチをみてとても嬉しそう。
      「あとは、ホテルの人に運んでもらうから」と言い、食事会場に向かってもらいます。

     レベーターで食事会場のある階に到着。と、エレベーターのドアが開いた瞬間、
      真正面に、般若の形相の先生が、仁王立ちをしていました!!
      「何をやってたんだーーー!!!」生徒さんは、驚きで固まり、下を向いて
      「ビ、ビーチのご、ゴミを拾っていたのです・・」と言うのが精一杯。
      その一言で、先生は全てを悟ったようでした。「遅刻はするな。席に着け」と
      言い、行ってしまいました。

     事が終わり、皆、部屋に戻った頃、先生がそっと私のところに来て、
      「ご迷惑、おかけしました」と言ってきました。先生は、生徒がゴミ拾いをしてい
      たことは素晴らしいことと、分かってはいるけれど、それでも、「遅刻はいけない」
      ことなので、大っぴらに誉めることはできないのです。
      
    良いことをやったのに怒られた生徒、それを分かってるのに誉められない先生。
      両者ともに複雑な心境でしょうね。思わず、うーむとうなってしまった出来事でした。
      「きっと、先生は、みんなが良いことしたって分かってるよ」と声を大にして
      言いたかったですヨ。それにしても、ゴミを両手にした生徒さんの笑顔、そして
      食事のあとに、「さっきは、ありがとうございました!」と言いに来てくれた姿は
      とても、爽やかで眩しかったです。 
 


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